GDP(国内総生産)
まず、経済政策と金融政策を説明する前に
日本経済の骨格を表している
GDPを説明する。



GDP(国内総生産)とは、
国内で生産されたモノやサービスの付加価値の合計金額である。
日本国で言うと、日本の
GDPには、国内の外国人(企業)の生産活動は含まれるが、
海外の日本人(企業)の生産活動には含まれない。
つまり、日本国を国境で分けたときに、
生産活動がどれだけの付加価値を生み出しているか?
を表す指標である。












国内総生産 民間消費 民間投資 政府支出 輸出 輸入
GDP  = C  +  I  +  G  +〔XM



一番大きな割合を占めるのが民間消費であり、
消費者がモノやサービスを買うことである。
消費が低迷すると、経済全体への影響も大きい。
民間消費については、国民所得額にも大きく関係している。
また、国民所得の計算式については、マクロ理論的に消費関数・投資関数・
貨幣需要関数そして、貯蓄関数が大きく関係するものであり、
専門省庁あるいは、マクロ経済専門家に聞くもしくは、
data(資料)を参照することが、適切である。SCG GROUP








経済政策と金融政策
経済政策
経済政策には、財政政策と金融政策を併用して運営することが多い。
不況時には、財政政策として政府が支出を増加させ、
G(政府支出)を増やせば全体が増えることとなる。
他に、通常の政府予算(本予算)では足りないときの追加予算として、
補正予算を組む傾向が長期に渡りあり、
多大な政府債務増加に繋がっている。




政府が予算を組んで支出しようとしても、お金がない場合もある。



そう言う場合、国債を発行して調達する。

国債とは、国が足りない資金を集めるために発行する債券である。
つまり、国の借金。
償却期間の短い順に、短期国債・中期国債・長期国債があり、
国債依存度が高くなると借金で首が回らなくなって、
財政赤字→財政破綻という場合もあり、
それぞれの国も経済成長政策や戦略に苦労している。

慢性化するとますます借金依存体質が強くなり、
経済成長戦略もないまま、次々に膨らんだのが政府債務となる。



日本国も債務の多い国の一国である。




減税も財政政策になる。
政府収入は減るが、
I(民間投資)が増加し、景気が良くなる。
法人税・所得税の税収も増え、財政政策としては、
減税も重要な景気を刺激する戦略である。








次に金融政策について調査しよう。











金融政策
日本国の金融政策の管轄省庁は、
財務省(トップは、財務大臣)であるが、
金利通貨の量を調整したりコントロールするのは、
日本銀行(通称:日銀)である。

不況時には、お金を借りやすくするために金利を下げたり、
お金そのものを増やすことで 

C
(民間消費)やI(民間投資)が増加する仕組みとなる。

逆に景気がよくなって、物価が上昇したりすると引き締めて金利を上げて借りにくくする。

つまり、インフレ対策として財布のヒモを締めて調整しているわけです。
日銀がドル買いをする行為(円安誘導)も不況期には、
製造業を中心として輸出産業で成長してきた日本企業は、
金融政策として効果がある。




このような、景気を調整したり物価の安定をはかったりするために
財政政策と金融政策を組み合わせて行うことを
policy mixと言う。

日本国は、財政政策に重心を置いているが、
欧米では、金融政策に重心が置かれている。

政府がやるべき金融政策もある。



それが公的資金である。




公的資金とは、簡単に言えば税金のこと。
過去に、複数の大手都市銀行に対して
7兆円規模の公的資金を注入し、
銀行の自己資本比率が改善されたが、
銀行が企業に貸し出したお金の中で回収不能になり、
処理が遅れた時代もある。








ゼロ金利政策
財政政策ではどうにもならないケースもある。
このような場合、金利をゼロ(ゼロ金利政策)にして
デフレスパイラルを回避する策を講じる。

金利ゼロなら、銀行がお金を借りやすくなり、
金融不安が払拭され、銀行自体の経営が安定する。
その後、銀行が企業に低い金利でお金を貸すことで景気が刺激され、
貨幣価値が下がってデフレスパイラルの機器を回避できると言う
日銀の金融緩和策である。




内需螺旋(らせん)状にある応急措置的政策であるが、
明確な内需・外需イノベーション(新機軸)が見つからなければ、

@法人税収の減少

A所得税収の減少

B物価下落→値下げ


C民間消費の減少、低迷

D企業倒産の増大に繋がり、最後は、

E国際競争力の低下


抜け出せない悪循環の道に陥る事になるだろう。(SCG GROUP社)




このような事が起きないよう政府は、後手に回らず、
常に景気回復循環図(構造改革)を見直さなければならない。








構造改革
景気回復循環図を構想するには、まず、

@産業構造を見直し

A金融システムの見直し

B規制緩和の見直し

C財政構造改革


D国・地方の財政構造改革

この循環図を見直さなければならない。



では、どうして構造改革を一気にしないのか?



つまり、構造改革をすると特に銀行や企業の見えない部分
(不良の部分)があからさまに出始め、景気が悪化してしまうからだ。
それが、銀行が抱える大量の不良債権問題である。








不良債権・貸し渋り
不良債権とは、銀行が企業に貸し出したお金の中で、回収不能あるいは、
回収不能になる恐れのあるもの。
銀行側は、この不良債権を増やさないためには、
返済が確実に処理できる企業以外は、貸さないと言う選択選択肢をとってしまう。
そのため、銀行が融資(貸し出し)基準を厳しくして、
なかなかお金を貸さなくなる。



これを貸し渋りと言う。



銀行の自己資本比率を一定水準以上に保つためにとられる
1つの方法である。

ところが、不良債権の処理を本気で進めると、
お金のない企業は、倒産

潰れるしかないと言う結果になる。



結果、企業の倒産が増加すれば失業者も増える。

雇用不安が広がり、消費も下がる。

GDPが落ち、構造改革を途中でやめる。

公共事業にお金を入れる。

それでも、景気回復しない。

財政赤字が更に膨らむ。

もう一度、構造改革をする。

不良債権の処理を進める。

景気が悪化する


この悪循環の繰り返しである。








金融再生法開示債権
不良債権については、金融再生法開示債権で見ることが一般化されつつある。
金融機関が、その債権について、債務者の資金繰り、
財務内容・収益性等の面から分析し、問題ある債務者に対する債権は、
その額を開示することが金融再生法によって義務づけられている。



これが金融再生法開示債権である。




相似したものとして、銀行法によって
その額の開示が義務づけられている問題債権もある。




これはリスク管理債権と呼ばれ、定義的にはほぼ同じである。
注意すべき点は、不良債権の占める8割以上は、
通常通り営業活動を行っており、
生きている債務者に対する債権(不良債権)である。(企業短期経済観測調査より)








不良債権の判断基準
@不良債権と正常債権間に明確な境界線はない。

A一定の基準を設け不良債権と正常債権を仕分けした境界線を引いても、
 終始その線を越えて債務者の移動が生じている。

B曖昧な基準の境界線で、そのどちらかにいる企業経営者は、
 死活に関わる大きな影響を生じる。




不良債権の中で破産更生債権・危険債権・要管理債権の間にも
これらを区別する明確な境界線を引くことはできない。
金融期間の保有する債権は、回収懸念度の順に並べると
破産更生から正常債権まで区切りがない。
その区切りの途中で一定の基準を設け、
ここから先が正常債権後が
不良債権と仕分けされたに過ぎないと言うことである。

一度、不良債権と認定されると、金融機関からの追加融資は、
まず受けられなくなり、
融資の返済を迫られることにもなる。



企業経営にとっては、厳しい状況に追いつめられることになる。(企業短期経済観測調査資料より)




よって、企業経営の状況・先行きの見通し等についての見方次第なのである。SCG GROUP社)







不良債権処理
不良債権のうち破産更生等債権については、
政府が処理を促進しないまでも、銀行自体が早急処理することになる。

従って、政府の不良債権処理製作により、処理の対象とされるのは、
現在生きている不良債権と危険債権が対象となる。

政府の言う不良債権の処理とは、
銀行の貸借対照表から債権自体を消去することである。

その方法には、債権放棄・債権売却等もあるが、
主たるものは、債権者企業を整理すること。
すなわち、担保処分等により回収できるものは回収し、
残余は金融機関が損金として処理することである。(企業短期経済観測調査資料より)








処理して不良債権はなくなるのか?
不良債権処理促進政策は、
不良債権の存在が景気回復の阻害要因であるとし、
これを処理することが必要となっている。




果たして、不良債権は処理をしてなくなるのだろうか?











過去の統計を調べてみよう。







不良債権(金融再生法開示債権)の推移(1995年〜2003年度金融庁推計まとめより)(単位:兆円)

                     1998年     1999年      2000年     2001年     2002年     2003年
都銀・長信銀・信託          21.9      20.4       20.0      28.4       20.7     13.8

地域銀行                12.0      11.4       13.6      14.8      14.6      12.8

(全国銀行)                 33.9   31.8    33.6   43.2   35.3   26.6

信金・信組等           8.7     9.1        9.4       9.2        9.2        8.0

預金取扱金融機関合計   42.6    40.9      43.0    52.4   44.5    34.6


「処理」額は、年度中の「直接償却額+貸出引当金取崩額(前年度末引き当て金残高+年度中繰入額-年度末残高)」として算出
 不良債権の「処理」が行われれば、銀行帳簿からは、これに加えた担保処分等により、回収した額消されるから、
  実際に「処理」された不良債権額はこれを上回る事になる。




日本全国の銀行が処理した不良債権の額は80兆円を優に超すと見られている。
貸出引当金の取崩し額と直接償却の合計額で
74兆円
これには、担保処分等により回収された不良債権の額は、これを上回る数字になる。
これだけの額が銀行の帳簿から消されたが、なお
26.2兆円の不良債権(リスク管理債権)がある。

当初、100兆円前後の不良債権があったが80兆円以上処理され、26兆円余りとなった。
2003年度の末の残高は、26兆円余りだが、この間2兆円程しか減っていない。
この間に80兆円以上の不良債権が発生した事になる。



つまり、不良債権を処理しても当該不良債権は無くなるが、処理の結果として
景気が悪くなると別な新たな不良債権が発生すると言う循環作用となる。
よって、不良債権があるから景気回復は進まないのは事実であるが、
「不良債権は常に発生するので、景気回復の問題解決策になると言う根拠にはならない。
不良債権の歴史は繰り返される。」と言う事である。(
SCG GROUP社)



不良債権を処理すると言うことは、
結果として現在活動している上昇企業であっても、
借入金と業績バランスが悪ければ、その企業を潰すことになり、
更に景気後退期に大量に不良債権処理、あるいは先送りした場合、
企業倒産の増加・失業者の増加に繋がると言うことになる。
そして、景気が悪ければ、事業シェアはいくらか増加しつつも、
事業イメージはダウンし、残された企業も経営は厳しくなる。

それが過去1990年代の不良債権処理の方法である。(SCG GROUP社)







不良債権処理促進策
2001年、アメリカの景気失速の影響を受け、
日本は金融機関に不良債権処理を急がせると言う政策を勧告した。
これは、「緊急経済対策」のひとつの大きな柱とされた。




金融機関に不良債権の処理を急がせることが
景気の落ち込みを防ぐ柱となるのか?



後に、「構造改革」政策の一環として組み込まれた。
不良債権と見なされる先(債権者)は、停滞分野と見なされる、
早く処理してそこに注ぎ込まれている経済資源(労働・資本)を解放し、
成長する分野へ移動させることにより、

成長すべく分野が成長でき、日本経済も成長する
不良債権処理促進すれば景気は良くなる。という論理である。

停滞分野が経済資源を抱え込み過ぎているから景気が悪い。
不良最近を処理(停滞分野を除去)しても景気の回復には繋がらない。
市場(民間金融機関と企業との交渉)に委ねていたのでは
埒(らち)があかない。と
当時の政府小泉総理大臣が掲げた「構造改革」政策である。



不良債権の存在はとてつもなく大きいものであった。(SCG GROUP社)







景気回復の阻害要因
「不良債権問題が経済を押し下げるメカニズムである。
不良債権問題の解決が我が国経済の再生に不可欠である。」と
日本経済財政白書で主張されている。




その要因として
@ 不良債権によって、銀行収益が圧迫されて銀行の金融仲介機能が低下している。

A銀行が不良債権を抱えている現状は、低収益性・低生産性・の分野に
 従業員・経営資源・資本・土地などの経済資源がいつまでも停滞し、
 高収益性・高生産性の分野に資源が配分されていない。


B銀行の経営破綻などにより、金融システムへの信頼の低下が
 企業や消費者の行動を慎重化
させ、設備投資・個人消費を押し下げている。

C銀行側は、不良債権問題 企業側は、過剰債務問題として密接に関係している。
 新規に優良な投資プロジェクトがあっても、銀行側から資金調達がなされない、
 企業側も債務返済を優先する為、設備投資を行わない。


 よって、不良債権の処理を急がなければならない。(日本経済財政白書より)







景気回復の為には不良債権処理が必要?
全国銀行不良債権増減とその要因(単位:兆円)

               2002年度       2003年度

オフ・バランス化            (▲15.1)       (▲9.8

健全債権化(含返済)        (▲ 3.1)        (▲5.5

新規発生               ( 10.2)        ( 6.6

年度中増減合計           7.9                   8.7

年度末残高(2001年度43.2   35.3                    26.6


金融庁は、2002年度以降、不良債権を要管理債権と危険債権以下に二分し、
その増減要因をオフ・バランス化されたもの(「処理」されて銀行の貸借対照表から消えたもの・
健全債権化したもの(不良債権と見なされていたものが、企業経営が良くなり、
正常債権と見なせるようになったもの)・返済されたもの・業況改善あるいは、
業況悪化により不良債権内に移動したもの・新規発生したもの(正常債権と見なされていたものが、
企業経営の状況が悪化し、不良債権されたもの)に分けて公表している。


上記の公表資料(2002年度と2003年度の変化)をもとに、
不良債権(金融再生法開示債権)全体をまとめて見ると、不良債権の新規発生が減少し、
健全債権化が増加しているのが目に付く。これは、オフ・バランス化の額が減少したにも関わらず、
不良債権の減少額が上回った要因である。つまり、景気が回復したことにより企業経営が改善され、
不良債権が正常債権化した、加えて新規発生額も減り、
そのために不良債権の増加も抑止された結果である。


この要点には、不良債権があるから銀行貸出が抑えらた為に、
投資(設備投資)も抑えられて景気が良くならないと言う点にあった。

2002年度と2003年度の変化の事実を見ると、不良債権は減ってきている。
しかし、銀行貸出は抑えられたままの状態にあるにも関わらず、
設備投資は、増加し
2003年から2004年にかけて景気は回復した。(不良債権公表資料より)


つまり、「景気回復の為には、不良債権処理が必要である。」と言う理論は根底から覆され、
この理論は誤りであることを2002年度と2003年度の不良債権増減数字で証明され、



結果、「景気に関係なく企業の中長期経営計画や償却期等によって、
    設備投資はされる。」
    と言う結論に達した。
SCG GROUP




 







次に需要と供給における在庫投資について調査しよう。







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